参考文献 一橋MBA戦略分析ケースブック 事業創造編 著者:沼上 幹、加藤 俊彦 アットコスメの戦略とその価値 アットコスメは化粧品プラットフォーマーとして美を追求する女性から圧倒的な人気を得てきた。月間3.1億のPV(2018年)がある日本最大級の化粧品ECサイトである。アットコスメの価値の1つとして知られるのは、公共財としての情報ソースという性質である。 公共財としての情報ソースとは? アットコスメは同サイトの口コミ機能によって、消費者に関する多くの情報を獲得・提供している。化粧品はその性質上、購入までには非常に多くの情報を要していたが、アットコスメの口コミのおかげで、オンラインでも「自分に合うか合わないか」の情報を得ることができるようになった。また、メーカーにとっても、それまでには得ることのできなかった自社商品への正直な感想や他社商品の消費者情報を得られるようになった。プラットフォーム上のこうした口コミ情報は、 バイアスのかかっていない中立的な情報 として信頼が置かれ、公共の情報という機能を担うようになった。 どのようにして公共財は築かれたのか? これは言い換えると「どうしてユーザーは口コミを投稿してくれるのか?」という問いである。アットコスメは、累計1400万以上の口コミ数を誇る。これだけの口コミをどのようにして集めたのだろうか?理由の1つには「手軽さ」が挙げられる。アットコスメで口コミをする際には会員登録などの面倒なアクションは一切必要ない。また匿名かつコメント返信機能もないため、消費者は気軽に口コミを投稿することができるのである。 口コミを投稿するもう1つの理由 先ほど、アットコスメで口コミが多い理由の1つにサイトの仕様をあげたが、それとは別にもう1つ強力な動機となっているものがある。それは 消費者の「承認欲求」 である。「月間に3億PVの全女性が注目するようなサイトで化粧品を紹介すれば、美容に関心が高く おしゃれな女性であることを対外的にアピールできる 」という消費者の内的な動機である。このような承認欲求を満たす目的においては、TwitterやインスタグラムなどのSNSと同じような原理で、ユーザーが増えれば増えるほどその消費者の効用は高まる。これは ネットワーク外部性 とも呼べるが、アットコスメではある時を境に